東京アスリート認定選手・インタビュー(48) 髙橋利也選手(港区) 卓球(知的)(2019/11/14)

髙橋利也選手の写真

【プロフィール】
たかはし・としや 1993年7月30日生まれ。日立SC株式会社所属
2017年アジア選手権 シングルス3位・団体戦1位
2018年チェコオープン ダブルス優勝
2018年アジアパラリンピック シングルス3位

8月1日(木)から3日(土)、港区スポーツセンターで『ITTF PTTジャパンオープン2019 東京大会』が開催された。パラ卓球の国際大会が東京で開催されるのはこれが初めて。1年後に迫った『東京2020パラリンピック』を控え、世界からトップ選手が集結。東京アスリート認定選手の髙橋利也選手は、知的障害者「クラス11」で出場した。

~ジャパンオープンはいかがでしたか?~

髙橋利也選手の写真2

パラ卓球を始めて10年目になり、国際大会も5年くらい出場していますが、今回のジャパンオープンは知的障害と身体的障害を含む、日本で初めてのパラ卓球の国際大会なので、今までと違った雰囲気で緊張しました。

パラ卓球自体を初めて見る方もいたと思うので、いい機会になったと思います。シングルスは残念ながらベスト8に終わったのですが、団体戦はチームでいい結果を残せたので良かったです。

~卓球に出会ったきっかけを教えて下さい~

最初は色々なスポーツをしていましたが、祖母が卓球をしていて、小学校1年生くらいから遊びで祖母と卓球をやり始めて、他のスポーツよりも自分に合ったというか、どんどん楽しくなっていったというのがきっかけです。

中学までは普通学級でしたが、高校からは特別支援学校に通うことになり、そこでパラスポーツとしての卓球に出会いました。部活で卓球をやり始めましたが、同時に卓球教室にも通い、そこでは一般の人と一緒に練習し、コーチにマンツーマンでレッスンをしてもらいました。高校から本格的にやり始めて、今年で10年目になります。

~きっかけはおばあさんとのことですが、続けるにはご家族の協力も必要ですね~

家族はものすごくバックアップしてくれるし、応援もしてくれます。でも、『なるべく自分で出来ることは自分でしなさい。どうしても出来ない時はサポートしますね』という親なので、普段から自分のことは自分でするということが、プレーのメンタル強化にもつながっていると思います。

~これまでに印象に残っている試合、転機になった試合はありますか?~

2015年の世界選手権で、シングルスとダブルスが3位、団体戦が準優勝になったことはすごく嬉しかったです。しかもその年は台湾で行われた国際大会で優勝して、世界選手権に初出場することが出来た年。2015年は世界の舞台で戦っていくキャリアの始まりであり、世界を初めて感じた、とても印象深いシーズンとなりました。

僕はどの大会でもガチガチに緊張してしまうのですが、国際大会は他の大会とは雰囲気も違いますし、世界のレベルを肌で感じることが出来たことは、本当に大きな経験だったと思います。僕は不器用で、人一倍練習しないといけないタイプです。でも、その分しっかりと準備をすれば国際大会でも結果がついてくるんだと自信にもなりました。

そして、世界で活躍している同じ知的障害のカテゴリーの選手を見て、『自分もがんばったら、あの人のようになれるんじゃないか』という、勇気をもらいました。そして改めて、世界は広いんだなと感じることが出来ました。僕の転機となったのは2015年だったと思います。

~これから世界で戦うために必要なことはなんでしょう?~

髙橋利也選手の写真3

全体的にはまだまだですが、どの国際大会でもメダルを持ち帰ることが出来るようになりました。しかし、昨年(2018年)と今年は世界ランク1位から8位の選手に全て競って負けています。メンタルの部分ともう一歩上回る技術、もっといろんな引き出しを持たないと世界ランキング上位選手には勝てない。その辺の強化が必要だと思っています。

~東京2020大会出場に向けて、今後の予定を教えて下さい~

来年1月のランキングで、知的障害の「クラス11」は世界ランク12位までに入っていないと、出場できません。僕は今世界ランキング13位なので、あと1つ上げないといけない。ここから1桁の8位くらいまでには食い込みたいと思っています。

10月に世界選手権がありますが、この大会が、代表選考に向けて一番重要な試合だと思っています。5月のスロベニアオープン、8月のジャパンオープン、9月のチェコオープン、10月の世界選手権の4つの大会に出ると、パラリンピック出場に必要な『クレジットポイント(出場ポイント)』はクリアできるので、あとはランキングを上げるだけだと思っています。

~パラリンピック出場に向けてライバルは多いですね~

髙橋利也選手の写真4

「クラス11」は日本のレベルが非常に高くて、国内の試合は世界レベルで戦っているのと同じ状況です。ランキングでは僕の上に二人の選手がいて、さらに若手で力を伸ばしてきた高校生の選手もいます。

僕は日本人選手の中でも3番手くらいですが、この間のアジア選手権で初めて出場したその高校生選手が優勝して、東京2020パラリンピックの出場権を先に手にしたので、3番手の僕としては非常に厳しい状況になったと言えます。10月以降の大会は本当に正念場だと思っています。

~東京2020大会への意気込みをお聞かせ下さい~

パラリンピックはまだ1回も出たことがないので、一生に1度は経験したい。また、パラスポーツの素晴らしさを色々な方に見ていただいて、障害者、健常者関係なく、勇気を与えられたらと思っています。こういう人になりたい、と思ってもらえるようにがんばりたい。

周りの皆さんのおかげで自分がいるので、とても感謝しています。普段応援してくださっている全ての方に感謝の気持ちを忘れずに、恩返しできるように、金メダルを目指して、しっかりと準備をしていきたいと思っています!

~2020年大会に期待すること~

髙橋利也選手の写真5

パラスポーツでメダルを目指すのであれば、一般の選手とともにパラの選手の練習環境も整えることが必要だと思っています。やりたくても出来ないパラ選手は沢山いるので、これを機に、パラスポーツに打ち込める環境整備のきっかけになってくれればと思っています。

また、僕らは身体的な障害ではなく知的障害なので、心のケアに関しても意識が広がってくれると嬉しいです。障害者や健常者に関係なく、皆で一致団結してお互いが分かりあえる、理解し合える機会になればいいなと思っています。


リンク:東京のアスリートを応援しよう!