東京アスリート認定選手・インタビュー 水田光夏選手(町田市) 射撃(2018/12/10)

水田光夏選手の写真

【プロフィール】
みずた・みか 1997年8月27日生まれ。
障害:両上下肢障害
2017年 全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会 10mP60MW-SH2準優勝

10m先の的をエアライフルで狙う射撃競技で、全日本選手権大会で準優勝し、これから海外遠征にも挑戦していく、いま注目されている若手女子の水田光夏選手にインタビューしました。

「練習から1発1発を大事にしながら
競技のモチベーションを高めています。」

〜射撃を始めようと思ったのはどうしてですか。〜

水田光夏選手の写真1

車椅子になる前は、クラシックバレエやスキーをやっていましたが、車椅子になり、何か出来ることはないかなと思っていたところ、高校2年の時に国主催の発掘事業を知り、参加しました。そこで、パラリンピアンの講演会があり、たくさんの競技選手の話を聞くなかで、射撃の田口亜希選手の話に興味を持ったのがきっかけです。射撃なら体の動きが少なく、自分の障害でも出来ると思いました。

〜実際に競技を始めてから、いかがでしたか。〜

最初は、ビームライフル(光線銃)射撃から始めました。始めた頃から高得点が取れたので楽しいな、という感じでやっていました。18歳になるとライフルの所持が可能となったので、許可を取得してエアライフルへ転向しました。エアライフルはビームライフルに比べると、弾の反動や引き金を引いてから当たるまでのタイムラグなどがあり、簡単に当たるものではありませんでしたが、それもまたおもしろいなと思いました。

〜自分でターニングポイントだと思った瞬間はありましたか。〜

水田光夏選手の写真2

去年、初めて出た全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会で、自分と同じように障害を持った選手たちと初めて出会えたのが大きかったです。それまで障害を持った選手と交流する機会はなく、自分と比べる対象がいませんでしたが、本大会では、パラリンピック3大会連続出場の瀬賀亜希子さん、アテネ・北京パラリンピック代表の木下裕季子さんたちと一緒にお話しできたのは嬉しかったです。競技でも、1位の瀬賀さんに0.5点差で2位までいけたので、もっと頑張ろうと思いました。

〜ご自身の競技者としての強みは何ですか?〜

あまり緊張しないことが強みです。「冷静沈着」で、大会でも練習時と変わらずいつも平常心です。

〜練習で心がけていることやモチベーションを維持する方法など教えてください。〜

日によって違いますが、1回の練習(3時間程度)で100発ぐらい射ちます。いまは始めたころよりも1発1発を時間をかけて大切に射つようになりました。射った後にどこが悪かったのか、しっかり考えるようになり、質の高い練習を心がけています。またモチベーションを維持するために、細かく目標を立てて、それをクリアしていくために練習していくことや、適度に休憩を入れて、あまり練習をし過ぎないことなどを実践しています。

2018年WSPSワールドカップ・シャトールー大会の様子

※2018年WSPSワールドカップ・
シャトールー大会

〜9月下旬に初めての海外遠征でフランスへ行かれますが、どんなお気持ちですか。〜

特に気持ちに変わりはないのですが、言葉が通じないことだけが不安です(笑)。平常心でいつも通りにできればいいなと思います。今回の海外遠征の目標は、パラリンピック日本代表に選ばれるのに必要なMQS(ミニマム・クォリフィケーション・スコア=基準点628点)を取ることです。

〜集中力を持続させるためのメンタルトレーニングは行っていますか。〜

特別、メンタルトレーニングはやっていませんが、射つ時は「呼吸」に気をつけています。イライラしていると集中できないので、「呼吸」で気持ちを落ち着かせます。リラックスしてから集中モードに入っていくという流れを1発1発ごとにやっています。

〜「東京アスリート認定選手」に認定されて何か意識が変わったことはありましたか。〜

「東京アスリート認定選手」認定式に参加した時、他競技の選手たちと交流できる機会がありました。射撃を知らない人もいましたし、私が知らない競技の人もいて、そこで初めて他競技の障害者スポーツのことを広く認識しました。普段の練習内容や日頃気をつけていることなどお話を聴けて、自分も努力していきたいと思いました。

〜2020年パラリンピックに向けての課題と目標について。〜

これからの課題は点数を上げていくことです。2020年パラリンピックに出場するために、必要な資格を海外の試合で確実に取っていくことが今の目標です。

2020年パラリンピックが東京で開催されると知ってから射撃を始めたこともあり、もちろん出場を目指しています。東京でやるからには出場したいです。

〜競技と学校生活の両立はどのようにしていますか。〜

水田光夏選手の写真3

どちらも限界まで行って苦しくならないよう適度に休みながらやるようにしています。大学では、就職を見据えてというより、やりたいことをやろうと思い、ゼミや委員会を選びました。そこでは、偶然にも入学した時から仲の良い子と同じものを選んでいました。

〜お気に入りの場所はありますか。また休日は何をしていますか。〜

お気に入りの場所は、通っている病院の近くにある複合施設「二子玉川ライズ」です。「生牡蠣」が好きなので、施設内のオイスターバーによく行きます。休日で元気な時は、友だちと映画を観に行ったり、カラオケに行って歌ったりしています。音楽はジャニーズやK-POPが好きでコンサートにも行くことがあります。でも試合前は落ち着いた感じの音楽を聴いています。あまりテンションが上がるのもよくないのかなと思って(笑)。

〜障害を持っていて、スポーツに興味のある人へ何かアドバイスをお願いします。〜

私の場合は、スポーツをやりたいなという気持ちはあっても何があるのか分かりませんでした。いまはパラリンピック関連イベントが増えているので、そこに参加してみると良いです。最初は、自分の障害の度合いでも出来るかな?と思うでしょうけど、少しでも興味が湧いたら、話を聴いて、実際に体験してみるのが良いかなと思います。

※取材は2018年9月13日に実施したものであり、2018年9月22日からフランスで始まる2018WSPSワールドカップ・シャトールー大会前のもの。

《NRAJ認定C級コーチ 鳥居さんのお話》

エアライフル競技は、ミスはすべて自分の責任というとてもストイックで難しい競技です。水田選手は、緊張感のある大きな試合でも、普段通りに平常心で取り組めるのが強みだと思います。最近では、自ら練習の質を高めるなど前向きに頑張っています。

水田選手には、いつもお母様が付き添っています。送迎や練習サポート、自宅での食事管理など、全面的にサポートされています。取材終了後の雑談で、「競技を始めてから母との仲が一段と良くなりました」と話す水田選手が印象的でした。是非、家族一丸となってパラリンピック出場を目指して欲しいと思います。

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