セントラルスポーツ
会員制総合スポーツクラブ・フィットネスクラブ

障害者水泳練習会を成功させて、全国のスポーツクラブでも障害のある方にスポーツの場を提供したい

写真:セントラルスポーツ紹介右より、渡邉一樹マネージャー、榎本仁コーチ、荻原虎太郎さん

「0歳から一生涯の健康づくりに貢献する」を経営理念に全国240か所でスポーツクラブ運営を展開する「セントラルスポーツ」は、創業以来続けているスクール事業をはじめ、フィットネスクラブなど市民に「健康づくり」の場を提供し続けています。

今回、障害のある方を対象とした水泳練習会を行っているという「セントラルフィットネスクラブ 千葉みなと」を取材させていただきました。お話をしていただいたのは、経営企画室マネージャーの渡邉一樹(わたなべ・かずき)さんです。

障害者にサービスを提供できるスポーツクラブを目指して

この水泳練習会が成功事例として認められ、全国の店舗に展開していきたい

この障害者向けの水泳練習会を始めたのは2017年6月ごろです。全国的に店舗を構えている弊社ですが、当時は障害者に向けた取り組みはできていない状況でした。東京2020パラリンピック開催が決定したのを機に障害のある方に対してもサービスを提供できるスポーツクラブづくりを目指すべく、その足がかりとして、この水泳教室を千葉みなと店で始めました。

現在、他のスポーツクラブでも個々に障害者向けの取り組みは行っていますが、まだ全国的に全社で取り組めている状態ではありません。今は取り組みの中で、どのような課題があるのか抽出して次に繋げていこうという段階です。この水泳練習会が成功事例となって、全国的に他の店舗にも展開できればと思います。

写真:水泳練習会の様子1
水泳練習会の様子
写真:水泳練習会の様子2

この練習会を続けながら、今後の課題点を洗い出していく

現在は、一般のスイミングスクール生と時間帯を分け、土曜日の夕方という利用者の少ない時間帯に合わせて開催をしています。他の利用者の皆さまもこの水泳練習会がこの時間帯にあることを理解されています。

しかし、これが一般のスイミングスクール生と同じ時間帯でやるとなると、使用レーン数などの問題がでてくるかもしれません。これを全国的に広げていくのであれば、一般のスクール生と同じ時間帯でも出来るようにしていかなければいけませんし、そのためにもスポーツクラブのソフト面、ハード面でも工夫をしたり、作り方を変える必要性もあると思います。

この水泳練習会は知的障害者の方が多いので、ハード面ではそこまでハードルは高くないのですが、身体に障害のある方が多くなった場合には、現在の状況では十分でない部分もあると思っています。スタッフの人手であったり、ロッカーで着替えてからプールまでの動線であったり、ソフト面、ハード面で課題は多くあります。

また、この水泳練習会に参加している方は泳力の高い人ばかりですが、あまり水泳に親しみのない人を教えるとなると、安全面をはじめ別の課題が出てくると思います。

それに、全国的に他の店舗にも展開していくには、教える側、支える側の知識やスキルを高めることも必要かと思います。

保護者からもサポートしてもらいながら練習環境づくり

水泳練習会を実施する上で、保護者の皆様のご協力は欠かせません。知的障害のある方は、コーチの指導だけですと、途中で不安になってしまって練習に集中できなくなってしまう場合もあるので、そうした時に保護者の方がお子さんに声がけ等のサポートしてくださるのはとても助かっています。

今、練習会に参加しているのは自分で着替えができる方ばかりですが、一人で着替えができなくても保護者の方や介助者がサポートしていただければ参加できます。

私たちの取り組みを知ってもらうことで、全国の他のスポーツクラブでも障害のある方にスポーツの場を提供できる仕組みができたらと思います

今、障害のある方が民間スポーツクラブに来て、自由に運動できたり、泳いだりできる仕組みが、弊社だけではなく全国のスポーツクラブでもまだまだ整備されていない状況です。この水泳練習会に通って来てくれる方たちは毎週毎週元気にやって来て、ハードな練習ではありますが、一生懸命取り組んでくれます。

この取り組みが、もっと知れ渡ってくると、民間スポーツクラブでもこんなことをやっていると気づく方々が出てきて、潜在的なニーズも呼び起こせるのかもしれません。私たち自社内だけでやっている内向きな取り組みではなく、全国の他のスポーツクラブでも障害のある方にスポーツの場を提供できる仕組みができてくるといいなと思っています。

写真:水泳練習会の様子3
水泳練習会の様子
写真:水泳練習会の様子4

まずは障害のある方が泳げる環境の間口を広げる

障害者水泳練習会を指導する榎本仁さんの話

写真:榎本仁さん

《プロフィール》
榎本 仁(えのもと・ひろし)
有限会社 仁スポーツネットワーク 代表取締役
全国障害者スポーツ大会千葉県選手団監督、気愛水泳塾コーチ

2017年6月より千葉みなと店において、障害者水泳練習会を指導している榎本仁コーチにお話を聞きました。コーチは全国障害者スポーツ大会千葉県選手団監督、自身が主宰している気愛水泳塾コーチとしても活躍されています。

私自身が開催する水泳練習会には年々障害のある参加者が増えてきました。彼らは練習場所が少なく、公共施設での練習もなかなか難しいし、民間スポーツクラブは敷居が高い。そうした中、水泳をしたい障害者に練習場所を作っていかなければいけないと思っていたところ、セントラルスポーツさんから話をいただいたのがこの水泳練習会の始まりです。

今、この水泳教室に参加しているのは10名程度の方ですが、セントラルさんのような民間スポーツクラブで練習できる意義は大きいです。こうして「決められた日」に「決められた場所」で練習できることが彼らにとってありがたいことなのです。

このような取り組みがいずれ全国に広がることを望んでいますが、まだまだハードルはあると思います。でも、千葉みなと店の取り組みを続けて、皆さんに見てもらって、成功事例として認識してもらうことから始めないと、間口は広がっていきません。今は時間をかけて皆さんに知ってもらえるようにしています。民間スポーツクラブでも、キッズコースがあります、マタニティーコースがあります、シニアコースもありますと、その中に障害者コースもありますという存在までなればいいですね。

このような水泳練習会が全国にも広がって、パラ選手が泳げる環境を増やしてほしい。

水泳練習会に参加している荻原虎太郎さんの話

写真:荻原虎太郎さん

《プロフィール》
荻原虎太郎(おぎわら・こたろう)
2002年生まれの高校生3年生、パラ水泳S8クラス(身体の機能に関する障害)の選手
専門種目:自由形・バタフライ
100m自由形・400m自由形・50mバタフライ
100mバタフライ 日本記録保持者

千葉みなと店の水泳練習会に参加している荻原虎太郎さんにお話を聞きました。荻原さんは4歳の時に右肩と右足に障害を負い、幼稚園年中の頃から水泳を始めました。中学1年生から選手コースに入って選手として活動し、現在、日本パラ水泳選手権大会、アジアパラ競技大会にも出場しています。

こういう場所で練習できるのはラッキーだと思います。障害がある水泳選手がこれだけ十分に泳げる施設は限られているし、榎本コーチに出会えたことも含めて、とても環境に恵まれていると感じています。

このような水泳練習会が全国にも広がるようになったら良いと思います。僕らは健常の方と混じって泳ぐこともあって、負けるとすごく悔しいんですけど、成長するために泳げる環境を多く確保できるようにしています。そのため、それぞれのタイムに合わせた層が集まって練習をしていける場所があった方がありがたいですし、障害の程度によって最適な環境で泳げるようにしていただくことが大切です。今、若手が少ない状況のパラ水泳を盛り立てる意味でも僕たちが頑張ってメダルを取らないと前に進まない。後に続く人たちのためにも泳げる環境は増やして欲しいと思います。

僕は、ますます練習に励んで、東京2020パラリンピックでメダルを取れるよう頑張りますよ!

写真:練習後にインタビュー
練習後にインタビュー

セントラルスポーツ
https://www.central.co.jp/

取材を通して学んだこと

障害のある選手にとって一番の悩みは練習場所です。ソフト面、ハード面でそれぞれが自身の障害に対応している環境が身近にあればと願う人も多くいます。そうした中において、民間スポーツクラブでも障害のある選手が積極的に練習できる場があれば、パラリンピック等の国際大会で活躍する選手の育成にも繋がるのではないかと強く感じました。