ラケットと車いすという武器で世界に挑む
- 車いすテニス
- 田中愛美 選手
- 港区
東京に続き、2度目のパラリンピック出場を果たした田中愛美選手。パリでの活躍も記憶に新しいなか、全豪オープン2025ではダブルスで準優勝を飾った。勢いにのる田中選手に、パリ2024パラリンピックのことや車いすテニスの魅力などを伺った。
(プロフィール)
たなか・まなみ 1996年6月10日生まれ。埼玉県所沢市出身。長谷工コーポレーション所属。中学、高校と硬式テニス部に所属。高校1年生の時に転落事故で脊髄を損傷、車いす生活になり、車いすテニスを始める。2018年世界ランキングトップ10入り。東京2020パラリンピック女子シングルス9位、女子ダブルス5位、パリ2024パラリンピック女子シングルス9位、女子ダブルス金メダル。全豪オープン2025女子ダブルス準優勝。
ダブルスで金メダル獲得。結果を残せたパラリンピック
東京、パリと2度のパラリンピックを経験されました。パリ2024パラリンピックにはどんな気持ちで挑まれましたか。
東京では目に見える結果が残せなかったので、今回は結果を残したいという気持ちが強かったですが、パラリンピックに出場するというよりも、上地結衣選手とダブルスを組むことのほうが大きかったと思います。上地選手と組むなら金メダルしかないと思っていました。
ダブルスのセオリーとして、強い選手ではなく弱い選手のほうに攻撃がしかけられます。上地選手と組むとやはり攻撃は私に集中しがちです。予想はしていましたが、自分が狙われてミスをすれば責任は重いと感じてしまい、最初は本当に緊張しました。けれど最後は逆に開き直ることで、試合に集中できました。
車いすテニスは、開会式が終わってすぐに試合が始まり、決勝まで進むと閉会式ギリギリまで試合があります。そのため観戦を楽しめるほどの開放感はなかったのですが、ダブルスの試合が終わって、シングルスの応援に行こうとしたら、スタッド・ローラン・ギャロス(テニス会場)の外でアイスを売っていたんです。試合中から絶対にアイスを食べたいと思っていたのでアイス屋さんの前でじっと見ていたら、お店にいたお兄さんが買ってくれました。嬉しかったですね。
試合に合わせて世界各地を飛び回る生活
2~3年前からグランドスラムには定期的に出場するようになって、今までダブルスではベスト4止まりでした。ベスト4という分厚い壁を破って決勝に進めたのは初めてだったし、そこで準優勝できたのは大きなことでした。ペアを組んだ朱珍珍選手とコミュニケーションが上手くとれ、同じ意識で1試合1試合戦えたことが勝因だと思っています。
試合に次ぐ試合で、体力維持などのコツはありますか。
そうですね。年間で国内外合わせると25大会くらいは参加していて、海外だと試合の前後で1週間くらいは現地にいるので、長い期間海外に出ています。体力維持が大変ですねと言われることも多いですが、体力はあるみたいです。日本にいる期間は限られますが、その合間をみて車いすテニスを知っていただく機会があれば参加しています。先日も東京都が主催している「チャレスポ!TOKYO」に参加してきました。パラスポーツの普及はもちろんですが、イベントなどで車いすテニスを知って、競技者になる人が増えるといいなと思っています。選手が増えないと車いすテニスも発展していかないので。
ラケットと車いすを武器にして
車いすテニスは健常者のテニスと違い、ツーバウンドが可能です。そのため意外とラリーが続きます。ラリーが続いていくなかで、コートのラインぎりぎりのところに落ちたボールも拾っていく、コートを大きく使ったダイナミックなプレーを見ていただけたらと思います。
私は身体が大きいわけでもなく、パワーが強いわけでもありません。けれどラケットと自分用にカスタマイズした車いすという武器を使って戦えます。単純に体格差だけで勝敗が決まらないところが、車いすテニスの魅力だと私自身は感じています。
ダブルスの結果は嬉しく受け止めていますが、シングルスで結果を残すことがテニスプレーヤーとしては大事だと思うので、グランドスラムのシングルスでベスト4にコンスタントに入っていくことを目標にしたいです。そのために必要なのは決定力です。ここだというときに決められる力、もっとサーブを磨いて最初の1打目で相手からチャンスボールを引き出せるよう強化していきたいと思っています。
大好きな水族館でリフレッシュが活力に
東京ゆかりのパラアスリートとして、港区にゆかりがあるとうかがっています。
所属している長谷工コーポレーションの本社が港区にあって、本社に伺うことがあります。それから水族館が好きで友達と出かけることが多いのですが、「マクセル アクアパーク品川」は本当に良かったです。プロジェクションマッピングが演出で使われていてすごかったですね。出かけるのが大好きで、休日があれば予定を詰めに詰めています。友達と一緒においしいものを食べたりすることが何よりもリフレッシュになっています。